2010年04月26日

【新・民主党解剖】第4部 失望と動揺(1)「裸の王様」次に座るのは…(産経新聞)

 ■顔色変えた首相

 春とは思えぬ冷たい小雨が降りしきった4月17日土曜日。民主党選対委員長の石井一は独り、公邸に首相の鳩山由紀夫を訪ねた。

 「(勝敗を決する)1人区が、かなり厳しいことになっとる」

 夏の参院選情勢を伝え、選挙戦にも悪影響を及ぼしつつある米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題の早期解決を促すためだった。具体的な当落予想の数字を聞いた鳩山は顔色を変えた。

 「えっ。そんなことになっているんですか。もっと早く進めなければ…」

 4日後の21日に開かれた党首討論終了後。自民党総裁、谷垣禎一(さだかず)との討論で「私は愚かな首相」と認めた鳩山に、石井が会場でこう叱(しか)りつける姿があった。

 「何を言うとんねん!」

 民主党のベテラン職員は「首相は、幸夫人がインドの占い師から『普天間問題は米国が譲歩して解決する』と言われたので楽観していた」との党内で広まったうわさ話を紹介する。そして、こう付け加えた。

 「こんなうわさが流れること自体、おしまいだ」

 鳩山は、普天間問題の5月末までの決着に「職を賭す」と言明している。だが、閣僚の一人は鳩山内閣のお寒い現状を明かす。

 「閣僚懇談会などでも普天間の話題は全然出ない。みんな避けている」

 誰も鳩山に厳しい現実を告げない。王様は、自分が裸だと気付かないままだ。

 ■小沢支配への嫌悪

 副総理・財務相の菅直人、国家戦略担当相の仙谷由人、総務相の原口一博、外相の岡田克也…。

 党内ではポスト鳩山候補の名前がささやかれているが、誰が次の政権を担うにせよ、幹事長の小沢一郎の支持取り付けが大前提だ。

 とはいえ、それはあくまで党内事情でしかない。小沢が党内支配を固めるのに反比例して、その手法に嫌気が差した無党派層が去り、内閣や党の支持率は低落に向かっている。

 18日に小沢が地元、岩手県奥州市の体育館で営んだ両親の大法要。参列者の案内状には通し番号が振られ、出欠は「踏み絵」のようにチェックされた。だが、側近らが「3500人は集まる」と豪語していた参列者は、主催者側の発表で約2500人にとどまった。

 平成7年に同じ体育館で催された小沢の母、みちさんの葬儀には約6千人の弔問客が訪れていた。

 ■関係良好な2人

 鳩山と小沢。ともに「政治とカネ」の問題を抱え、一蓮托生(いちれんたくしょう)の間柄だとみられがちだが、党長老議員はそんな見方を否定する。

 「小沢はそんな生やさしいタマじゃない。鳩山だけクビのすげ替えをしようとしているんじゃないか」

 ポスト鳩山とされる人物のうち、小沢と関係が良好なのは菅と原口の2人だ。

 「鳩山さんが退陣したら、やっぱり菅さんが(首相に)昇格でしょうかね」

 今月上旬。ある省の政務三役会議で政務官が何げなく尋ねると、閣僚は無言でうなずいたという。

 「彼は首相候補なんだ。よろしく頼みますよ」

 3月17日、都内で開催された原口のパーティー。小沢側近の一人である党国対筆頭副委員長の松木謙公は、笑みをたたえながら来場者らと握手を交わしていた。また、原口は若手議員を集めた勉強会を開き、支持グループづくりを進めている。

                   ◇

 □いつまでもつか「小沢神話」

 ■「敵は内側に」

 「外の敵は怖くない。党内で議論するのはいいが、ゴタゴタしては決められるものも決められない」

 今月19日夜、青森市で開かれた民主党青森県連幹部らとの懇親会。幹事長の小沢一郎は党内の混乱に不快感を隠さなかった。

 その真意について小沢系議員は、「(メディアで小沢批判を繰り返す)副幹事長の生方(うぶかた)幸夫への批判だ。敵は自民党ではなく内側にありだ」と解説する。

 生方は翌20日、都内のホテルで朝食会を開いた。3月下旬の副幹事長職の「解任撤回騒動」以降は小沢批判の発信を控えてきたが、この日解禁した。

 「われわれが選んだのは首相だけだ。首相が幹事長を選んだにすぎない。放っておけば内閣支持率は20%を切ってしまう」

 3月31日には、連合静岡会長の吉岡秀規が小沢に幹事長辞任を促した。今月12日には、岐阜県連が党体制刷新を求める申し入れ書を党本部に提出した。

 抑圧された「反小沢」のマグマはたぎり始めている。

 ■多勢に無勢

 ただ、423人に上る党所属の衆参両院議員のうち、約3分の1を小沢系議員が占めるといわれる現実は無視できない。「数の論理」の前には、何を言っても多勢に無勢だ。

 首相の鳩山由紀夫の代表任期は9月で満了だ。そのとき鳩山が続投しているかどうかにかかわらず、代表選は実施される見込み。その事実が「数」を握る小沢の力を際立たせている。

 中堅議員は「生方騒動」はすっかり過去の話だと話す。今月初めに2度、都内の料亭などで生方を励ます会が開かれたが、顔を見せたのは1度目は生方を除き4人。2度目も8人だけと寂しいものだった。

 小沢に距離を置く財務副大臣の野田佳彦ら「民主党七奉行」の間ですら、小沢に対する主戦論は影を潜めている。

 「参院選で負けて小沢に責任を取ってもらうのも一つの方法だ。いずれにしても小沢(の政治生命)はこの先2、3年だろう」

 七奉行の一人はこう言うが、参院選前には手が出せないという意味でもある。

 ■カギはやはり選挙

 この閉塞(へいそく)状況に変化をもたらしつつあるのが、皮肉にも小沢が最も重視する選挙の結果だ。選挙に強いという「小沢神話」がほころび始めているのだ。

 推薦候補が10万票近い大差で敗れた2月の長崎県知事選をはじめ、民主党は地方選で苦戦している。

 最近の首長選をみると、鳥取市長選、千葉県木更津市長選では敗退した。岡山県浅口市長選では、副総理・財務相の菅直人の義兄が元自民党県議に敗北。小沢の地元・岩手の久慈市長選では、民主推薦の新人候補が現職に敗れ、小沢銘柄に陰りが見えた。

 今月12日、党本部。世論調査によっては政党支持率で自民党が民主党を上回る中で、小沢は記者会見で自信たっぷりに強調した。

 「心配しておりません。新聞やテレビの世論調査は当たったことがない」

 だが、実際はここ数年のメディアの選挙前の世論調査は、かなり正確に選挙結果と合致している。

 民主党の非改選議席は62で、目標の単独過半数には60議席以上が必要だ。だが、選対幹部の予想は「53程度」。さらに悪化する可能性も高い。

 「私がもう10歳若ければ、自民党も立て直してちゃんとした二大政党を作るが、70歳まであと3年しかないからなあ…」

 小沢は最近、周囲にたびたびこう漏らしている。強気な姿勢の裏側に、自らの年齢と健康状態への焦りもうかがえる。

                   ◇

 鳩山政権の凋落(ちょうらく)が止まらない。高い支持率で船出した内閣は、7カ月余りがたった今、国民の失望を買い、呆然(ぼうぜん)と立ち尽くしている。参院選敗北を予期した動揺が広まり、水面下で「ポスト鳩山」への準備と策動も始まった民主党の実像を描く。(敬称略)

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posted by bxckopfi1j at 19:24| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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